土は語る 早池峰山、古代の姿 |
「(有)森と緑の研究所副所長」 照井 隆一 |
土壌はその生成の因子として、気候と母材料に大きく影響されます。
このことから、土壌を調べることでかつてその場所がどんな場所であったか測り知ることができます。
早池峰山の土壌を調査していくと、現在とは随分違う古代の姿が見えてきます。
早池峰山の中心部は超塩基性岩である蛇紋岩が基岩となっており、調査をはじめる前には、蛇紋岩の風化した土壌があると思われましたが、調査の結果、早池峰山の土壌の母材料は火山灰であることが分かりました。これらの火山灰が降下したのは1万数千年前〜約1万年前の晩氷期と考えられており、蛇紋岩の風化土壌は過去に流出してしまったものと考えられます。
火山灰降下以前の層に腐食層等が認められないことから、1万数千年前の早池峰山には植生がほとんどなかったか、あっても貧弱な岩山であったろうと考えられます。
早池峰山では火山灰降下以降に植生が発達してくるのですが、その頃の植生は現在とは異なり、頂上から中腹部にかけて蛇紋岩性植物が分布し、山腹下部には森林ではなく草原が広がっていたものと思われます。
また山頂付近の平坦面には西暦300年頃まで池塘があったことが土壌調査により明らかになりました。 |