イヌワシ基金

イヌワシ基金とは?

東北環境研では、植樹、間伐による森林機能の維持向上(生物多様性・水源保全・景観保護・二酸化炭素吸収など)のための森林整備活動を行っています。

イヌワシ基金は絶滅危惧種であり天然記念物でもある稀少種のイヌワシを生態系のシンボルとして、森林の間伐を行う事業による針広混交林の導入、荒廃地やスキー場跡地に植樹を行う事業による森林再生などを行っています。
間伐では列状間伐として、イヌワシの餌狩場のための2伐4残・4伐8残などの方法や間伐材を利用した小動物の隠れ家作りなどを提言実践し、岩手県川井村公有林で活動を行っています。
植樹では、食餌木の植樹や土壌特性と適応樹種の調査研究、などを岩手県八幡平市松尾鉱山跡地で行っています。
イヌワシ基金は、活動に賛同する企業が、販売商品の売り上げの一部を資金として提供することで、購入者の方々も一緒にこの環境活動に参加するというものです。

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(上記写真はイヌワシの幼鳥  /  左の写真をクリックしてください。)

イヌワシ基金にご協力ください

(社)東北地域環境計画研究会
会長 由井正敏

イヌワシは天然記念物で全国に650羽くらいしか生息していません。そのイヌワシが岩手県内の北上高地に約30つがいも生息していますが、近年の繁殖成功率は急激に低下し10%前後にまで下落しています。この原因として、イヌワシの好適な餌狩り場(ノウサギが多く、翼が2m近くもあるイヌワシが狩りをしやすい疎開環境)の減少が関与していることを明らかにしました(由井・関山ら;日本鳥学会誌2005)。北上高地は1000年も続く放牧採草地や薪炭林施業によって、原生的自然は少ないものの、人と野生生物が共存する半自然植生が持続的に長年月にわたり管理されてきました。その半自然が社会経済状況の変化により、急激に失われてきていることが問題なのです。
イヌワシの繁殖成功率を改善し個体群を安定させるためには、繁殖成功率(1つがいが1年に巣立たせるヒナ数)が平均0.282羽以上になることが必要であると推定されました(由井;日本鳥学会誌2007)。
そのために必要な行動圏(半径6.4Km)内の餌狩り場の面積を多変量統計式によって計算しました。10年生までの幼令人工林のみでは560ha、旧来の放牧採草地(近代的な洋種牧草地はイヌワシは使わない)や5年生までの伐採放棄地のみでは1,020ha、101年生以上の落葉広葉樹のみでは770haが必要なことが分かりました。幼令人工林を必要量供給するためには、行動圏内の人工林を67年に1回伐採して造林することで充足されます。
しかしながら、北上高地のみならず国内の林業は上述のように戦後復旧や高度成長期の過剰伐採と安い外国木材の自由化によって衰退しているため、伐採や植林が進んでいません。昭和40年代には日本で年間40万haあった伐採地が現在はわずか3万haです。これは日本の森林2500万haのうち利用可能な1700万haを567年に一回しか伐らない速度です。その代わりに外国の貴重な原生林を伐採してその木材を輸入しているのです。
こうしたことから、イヌワシの餌資源確保及び餌狩り場確保の点で、応急措置としての列状間伐が有効と考えられ、これまで各地で実験を行ってきました。列状間伐というのは、人工林を2列伐採して4列残すというような方法で、幅数mの空間を林内に作り、イヌワシの採餌突入を容易にする方法です。成長の劣る造林木を抜き伐りする普通の間伐では広い空間が確保できません。
盛岡郊外のイヌワシ生息地では自然保護団体や東北環境研が10年も前からこの手法を実験しており、ノウサギが一時的に増加することを確かめています。人工林の伐採利用や列状間伐によって森林が明るくなることで、明るい林内を好む生物が増え生物多様性が向上します。また、間伐材をペレットストーブや温室ボイラーに活用することで地球温暖化防止にも貢献できます。
イヌワシ基金は、イヌワシ保護のための森林管理(列状間伐)、ノウサギ、ヤマドリなどの餌動物の確保・供給、巣の補修や人工巣の創出などに利用させていただく予定です。このことが、農山村の再生や地球温暖化防止にも貢献できることを願っております。ぜひ、皆様のご支援を頂きたいと念願しております。

東北森林管理局 三陸中部森林管理署で列状間伐が紹介されております★
詳しくは→
コチラ

環境省猛禽類保護センターでイヌワシの生態が紹介されております★
詳しくは→
コチラ